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→Pia-no-jaC←『Cinema Popcorn』インタビュー Part.2
STAFF
──樫原さん(ピアノジャック・サウンドプロデューサー)にお聞きしたいんですが、今作での制作の取り組み方にそれ以前との違いってありましたか?
樫原: 基本的には他のアルバムとそんなに変わってなくて。ただ、映画音楽には馴染みが深いメロディが多いので……特に歌モノはそうなんですけど、メロディをそのまんまやっちゃうと絶対にカフェのBGMみたいになってしまうので、それを2人のプレイでどう自分流のアーティキュレーションを付けていくかが鍵でした。セッションの中で自分のフレーズにしていかないと、クラシック以上にヤバいと思うんですよ。そういう意味ではセッションの回数は今までよりも多かったかもしれないですね。メロディを崩していく過程、そこからメロディに装飾を付けていく過程、そのアプローチに至るまでが特に歌モノは大変だったよね。
HAYATO: 大変でしたね(笑)。
──なるほど。実際カバー曲を聴いてるはずなのに、曲の合間にお互いのプレイがぶつかり合うパートが入ってくると完全に→Pia-no-jaC←の曲になってましたし。
HAYATO: そこはもう自由にできるところと認識して、自分たちなりに自由にやりました。例えば「MISSION IMPOSSIBLE THEME」なんて本当にワンフレーズの繰り返しなので、そこはとても苦労しましたけど。そのままやっていくと、ピアノとカホンだけだからしんどくなると思うので、それをお互いに飽きずに、どうグルーヴィーに遊べるかというところはかなり意識しましたね。
──「MISSION IMPOSSIBLE THEME」はこのアルバムの中でも一番緊張感のある演奏がフィーチャーされていますが。
HAYATO: これは面白かったです。5拍子がハマってくると、どんどん気持ちよくなるんですよね。終始5拍子で進行するんですけど、これまでも曲の中に突然5拍子が入ることはあっても、それはほんのちょっとだったんで。今回は面白いトライになったんじゃないかなと思います。
樫原: 結局は楽器がピアノとカホンの2つしかないので、主となるものをどちらかに落とし込むしかなくて。例えば「MISSION IMPOSSIBLE THEME」の冒頭のリフは、カホンであのリフをやってみようってところから始まっているんです。いろんな人がこの曲をカバーしてますけど、恐らく世界で初めてカホンだけであのメロディを再現しようとしたんじゃないかな(笑)。あと、カホンソロでは勝手にスパイストーリーを、サウンドデザインで作っていて。設定としてはHAYATOとHIROをスパイの敵同士に見立てまして、HIROがHAYATOを駐車場に呼び出して罠にはめようとするんです。だからHIROが駐車場の奥でカホンを叩いている風の奥行き感をリバーブで表現する。その中でHAYATOはひたひたと柱を伝いながら追い詰めていく。で、だんだんピアノの音が近づいていく中でHIROは「まんまとHAYATOがかかったな」と思っていると、そこからHAYATOにバーっと反撃されてしまうんです(笑)。そういう遊びをスパイスとして入れてみました。
──それは面白いですね。同じリフの繰り返しで淡々と進んでいきがちなところを、そういうオリジナルストーリーを加えることで起伏をつけたと。
樫原: →Pia-no-jaC←の映画みたいなイメージで、2人に楽器で演技してもらったわけです。
──映画音楽ってそのメインテーマを聴いただけで、脳内でその映画の映像が再生されるじゃないですか。そこが映画音楽の魅力だと思うんです。ところがこのアルバムでは曲のアレンジが変わったことによって、その名場面がことごとく更新というか改変されていて、そこが痛快なんですよ。
HAYATO: そうですよね(笑)。
──それこそ『アルマゲドン』(「I DON'T WANT TO MISS A THING」)なんて、原曲にあった「人類の存亡をかけて、これから旅立ちます!」っていう感動的な空気が、このアルバムでは元気いっぱいに「行ってきまーす!」と変わってしまっていて(笑)。
HAYATO: めちゃめちゃ明るいですからね(笑)。
HIRO: 最初はバラードでやってみようと試したんですけど、ちょっとしっくりこなかったんですよ。原曲に忠実すぎるというか。
HAYATO: それこそ本当にカフェのBGMみたいになってしまうし。
HIRO: で、結局行き着いたのがこれだったんです。
HAYATO: そこの作り方は昔から変わらず、スタジオで爆笑が起こればOKみたいなところはありましたね。それこそ「GHOST BUSTERS」なんて、声に出して叫んでしまってますからね!(笑)
──確かに。「あ、そこは言っちゃうんだ!」と僕も思いました(笑)。
HIRO: そこはやっぱり「ゴースト・バスターズ!」って声が欲しいなと思って。
HAYATO: あそこは大事ですよね。
HIRO: お任せください、叫びますので。
樫原: あそこは全員で叫んだのをダビングしようと思ったけど、HIROがピンで叫んでるほうが面白いなと思って。
HAYATO: 「あ、言っちゃうんだ!」っていう衝撃も、あわせて楽しんでもらえたらなと(笑)。
HIRO: でもあそこで言っても、俺なら許される気はしましたけどね。
HAYATO: 「GHOST BUSTERS」は7月の西日本ツアー(『Go West Tour 2016』)でもやってたんですけど、ファイナルではお客さんも一緒に叫んでましたからね。
──『ゴースト・バスターズ』はまさにリメイク版の公開を控えたタイミングですし、注目が集まりそうですよね。
HAYATO: そこを狙ったわけじゃなかったんですけどね。
──今回は偶然が重なり、すべてにおいてベストタイミングだったと。さっきの話に戻りますが、『戦場にかける橋』のテーマソング「The River Kwai March ; Colonel Bogey」は映画以上に知られているメロディですが、この曲に関しては行進している原曲のイメージから……。
HAYATO: スキップしてますからね(笑)。
──1曲だけ年代が異なるこの曲を選んだ理由は?
HIRO: これは最初の時点で選んでたよね。映画としては俺らが生まれる前の作品で馴染みは薄いんですけど、俺ら的には「サル、ゴリラ、チンパンジー」っていうこの曲の替え歌があったから。入り口は映画音楽じゃないのかもしれないけど、すごく馴染み深い曲ですし。
──確かに僕も子供の頃によく口ずさみました(笑)。世代を超えて、世の中の子供たちが一度は通る替え歌かもしれませんね。
HAYATO: 小学校のとき、全員歌ってましたからね。あれ、全国で同じ歌詞なんですかね?
──おふたりは関西出身ですけど、僕は関東出身でまったく同じ歌詞でしたよ。
HIRO: 不思議とそうなんですよね。調べたら、テレビ番組で歌ったのが最初らしくて。
HAYATO: 原曲を聴いたときに「あ、『サル、ゴリラ、チンパンジー』だ!」って、久しぶりに思い出しましたけどね(笑)。ちょうど去年の忘年会ライブで、僕はブギウギに初挑戦する『東京ブギウギナイト』というのをやったんですけど、そこで得たものを生かせないかなと思ってブギウギアレンジで弾いてみたら、めっちゃハマったという。
──この曲の主旋律は楽器でも歌でもなく、口笛です。
HAYATO: それも最初、HIROが「俺、口笛で挑戦します」って。
樫原: で、すごく練習してきたのかと思ったら、全然吹けてなくて(笑)。
HIRO: ものの1分で終了しました(笑)。
──なるほど(笑)。それにしてもクラシック以上に幅広い内容になりましたよね。
HAYATO: それをどう自分たち流に表現していくかが難しかったかな。でも気構えすぎずに、いつも通りでいいかなという思いもありましたけど。
HIRO: そこは逆に強みなのかもしれませんね。
【Part.3へ続く】
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